+魂の次元+ (by としべえ)

肩から力を抜いて、自由に楽しく生きる。

本の紹介「もう、沈黙はしない」 - 父親からの性的虐待を乗り越えて、力強く生きる - 矢川冬さんの場合

今日はちょっと重い内容の本を紹介します。

矢川冬さんは小学生のときに実の父親から性的虐待を受けました。50年も昔の話です。

助けを求めた母親にも拒絶され、冬さんは一人でその絶望的な状況を乗り越えるしかありませんでした。

こちらが彼女の30年にも及ぶ孤独な闘いの記(しる)された本です。

矢川 冬「もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて」(2018 NextPublishing Authors Press)

性暴力の問題は、重たすぎて、ぼくの力量では書ききれないのですが。

はじめにお断りしておきますが、ぼくはまだ冬さんの著書を読んでおりません。現在インドにいるため、著書を取り寄せて読むことが難しいのです。

けれども、アマゾンで読者のレビューを12編全部読んで、この本はぜひ多くの人に読んでもらいたいと思いましたので、見切り発車的ではありますが、冬さんの経験について、今書けるだけのことをこの記事で書いて、わずかばかりでも冬さんを応援したいのです。

また、ぼくの性別は男であり、LGBTというわけでもありませんから、女性に対する性暴力について、当事者的な立場で実際の体験にもとづいた発言をすることはできません。

ですからここに書くことは、ぼくなりの思考実験による一つの解釈の記述ということになります。

ただし、ぼく自身、社会における少数者としての「苦しみ」を自分なりに知っていますので、決して傍観者的な発言をするものではありません。

性暴力という極めて過酷な体験について、実感としては理解できないことを承知の上で、自分の経験してきた「社会からはみ出したもの」としての苦しみにもとづいて、自分にできる範囲で「冬さんの人生」を表現してみようと思うのです。

実父からの性的虐待という恐ろしい烙印

冬さんは9歳のときに性暴力事件を経験し、それについて何も言えなかったことを知った父親から、10歳から12歳のときまで性的虐待を受け続けることになりました。

アマゾンの著者紹介にはこうあります。

性虐待が10歳で始まると同時に成長はとまり、感情消失、言語の障がい、うつが出現する。性虐待を受けていた頃の体形そのものがPTSDを誘発する。24時間365日なぜ辛いのか。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4802094310?ie=UTF8&tag=ksatmblr-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4802094310

彼女はまさに「生き地獄」を生き抜いてきたのです。

「被害者のトラウマから発生する乖離症状が次の性被害を呼び込む」という構図の中で、冬さんはのちにさらなる性暴力を受けることになります。そのとき、実父から受けた性的虐待という「烙印」があるために、冬さんは「こんな被害を受けるのは自分が悪いのだ」という思い込みに苦しめられます。

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女が一人で生き抜くために。ボーボワールとフェミニズム

冬さんは10歳のときに「子どもは入らない、結婚もしない」と決心し、家族から離れることを第一の目標にします。

性虐待のトラウマから「自分は何もできない無能な人間だ」と信じ込んだ冬さんは、唯一の逃げ道を勉強に見いだし、地域で一番の公立高校に入り、有名私大に合格して実家を逃げ出します。

けれども、家族から離れても彼女の「生きにくさ」は減るどころか増すばかりでした。

虐待の後遺症であるPTSDは遅れてやってくるのです。しかも当時は誰にもなんの知識もなく、一人の専門家すらいませんでした。

パニックや鬱の症状がどうして起こるのかも分からず、自分の性質のせいだとしか考えられず、孤軍奮闘せざるを得なかった彼女の救いになったのは、女一人で生き抜くために、教育と経済力をつける過程で出会ったフェミニズムでした。

なかでもボーボワールから強く影響を受け、ご著書の中でもボーボワールの「娘時代」を含め、自分の経験にもとづいて、女性の自立に役立つさまざまな書籍を紹介してらっしゃいます。

冬さんが本当に一人で切り抜けなければならなかった五十年前と比べれば、性暴力の被害者にとって今の状況は多少なりとましなものになっているはずですが、実のところ社会的な偏見は根強く残り、医療・福祉関係者の無理解もまだまだあり、男性による女性の抑圧自体が、未だに十分認識されているとは言えません。

本書のような書籍が多くの人に読まれることで、少しでもよい方向に社会が変わっていくことを切に願うものです。

冬さんの底力

冬さんは、実父からの性虐待を受けるまでは、きっと聡明な子どもだったに違いありません。お母さまからも事件以前は必要十分な愛情を受けていたのではないでしょうか。

だからこそ、実父から「ありえない仕打ち」を受けても潰れずに生き延びることができたのでしょう。

そして「実父の罪を明らかにする」という目標を持つことにより、「マイナスの事件」を生きるエネルギーに変え、数々の困難を乗り越えて「天涯孤独」の人生を成り立たせた上で、著書まで出版し、少女が自立するためのシェルター運営という、現在のライフワークにまで至る道を歩み続けることができたのだろうと思うのです。

若い頃に自殺を試みた冬さんの、

若い人で死にたいと思っている人がいたら、とりあえず仕事だけしてて60歳まで生きてみてと言いたい。せっかく苦しみを知り、生きることについて考えることを知った価値あるあなただから、みすみす死ぬのはもったいない。社会の損失だと思います。同じような人たちと話してからでも遅くはありません。

女性がひとり生きること - 性虐待と闘う、矢川冬の場合

という言葉は、本当に重みがあります。

今は冬さんの時代とは違って、仕事をしなくても生き延びる道はいくらでもあります。

自死を考えざるをえないつらい状況にある皆さんには、冬さんの声は暖かい応援の言葉になるものと信じます。

はじめに「30年にも及ぶ孤独な闘い」と書きましたが、その闘いはたぶん今も続いているのに違いありません。家族に対する闘いは終わっても、社会に対する闘いに終わりはないからです。ですがその闘いは、今は孤独なものではないはずです。

冬さんはいま少女の自立を助けるシェルターの運営を始めたところです。

シェルターに使っている家の持ち主は、児童養護施設職員をしている仲間の方です。そして、ブログを通して応援している方も大勢います。

シェルターという性質上、あまりオープンにできないこともありますし、実際の運営はかなり大変なものではないかと思いますが、冬さんのブログの文章を読んでいると、この方なら大丈夫、すばらしいシェルターになるに違いないと思えます。

三月には日本に一時帰国するので、そのとき冬さんの著書を読むのが待ち遠しいですし、シェルターの活動のこれからの展開にも期待しています。

今後も折りに触れて、冬さんの活動を紹介していけたらと思います。みなさんもどうか彼女の活動を応援してあげてください。

アマゾンで、初期費用無料で自分の本を出版して売れる時代なのね。

冬さんの本はオンデマンドで出版されており(注文があるたびに印刷製本される)、出版元は NextPublishing Authors Press というところになっています。

これは、こちらのサービスを使って出版と販売を代行してもらっているのですね。
アマゾンPODを無料で利用するなら《著者向けPOD出版サービス》

初期費用も利用料もなしで、販売価格から販売手数料と印刷費を引いた額が収入となるってんだから、素人が少部数出版するには打ってつけですな。

ページ数が、100、200、300 の本を1,000円、1,500円、2,000円で販売するとこんな感じになります。

ページ数 *価格 *手数料 *印刷代 *収入
100 1,000 400 430 170
200 1,500 600 680 220
300 2,000 800 930 270

※モノクロ印刷の場合。手数料=価格x40%、印刷代=ページ数x2.5円+180円。

普通に出版したとしても印税は価格の10%のはずですから、その点からも十分メリットがある価格設定でしょう。

文章の書ける人は、売れたら儲けものくらいの軽い気持ちで、気楽に出版してみるのもいいかもしれませんよね!

矢川冬さんのことはわっと (id:watto)さんに教わった。

矢川冬さんのことはわっと (id:watto)さんのこちらの記事で知りました。

反児童虐待・書籍寄贈の旅(その1)岐阜県図書館 - しいたげられたしいたけ

「世の中のために、自分のできることを考えて、とにかく何でもやってみよう」という、わっとさんの意志とアイディアと行動力には、いつも刺激を受けています。

今日はこういう記事を書くことで、自分なりにできることをやってみました。

わっとさんのおかげです。ほんとにいつも、ありがとうございまーすっ。

てなところで、この記事はおしまいです。
それではみなさん、ナマステジーっ♫

☆今回紹介した本です。ぜひアマゾンでチェックしてみてください。
矢川 冬「もう、沈黙はしない・・性虐待トラウマを超えて」(2018 NextPublishing Authors Press)

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