+魂の次元+ (by としべえ)

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環境型セクハラで京都造形大が訴えられ、エログロ画家・会田誠氏、とんだ「交通事故」に巻き込まれる

※記事最後に掲載していた会田氏のエログロ画像は、リンクを掲載する形に変更いたしました。

京都造形芸術大学が開催した、画家の会田誠氏らの公開講座を受けた美術モデルの女性(この記事ではオーさんとします)が、環境型のセクハラを受けたとして大学を訴えたことが、ネットの片隅で話題になっています。

この記事では錯綜する情報を整理し、訴えられていない会田誠氏と、大学を訴えた女性オーさんには「ほとんど問題は見られない」ことと、

  • 公開講座を主催した大学には大きな問題があること

を説明します。

ちなみにぼくは、会田さんの作風は割と好きなんですが、題材にはちょっとエグすぎるものもあるなあと思ってます。

また被害女性は「おばかなアカデミズム」にやられちゃって、ホントに可哀想だと思います。

美術モデルをしている女性オーさんの訴えはこうです

オーさんは、京都造形芸術大学の通信教育部を卒業後、美術モデルをやっている39歳の女性です。

彼女は、京都造形芸術大学・東京藝術学舎で開かれた社会人向け公開講座(全5回、2018年4月から6月にかけて開講)

  • 『人はなぜヌードを描くのか 見たいのか』

を受講しました。

三回目の講師の会田氏は、過激なエログロの画風で知られる画家ですが、オーさんはそのことを知らなかったといいます。

18年4月~6月に全5回行われた「ヌードを通して、芸術作品の見方を身につける」という社会人向け公開講義を受講したとのこと。会田氏がゲスト講師を務めた第3回の講義では「涙を流した少女がレイプされた絵」「全裸の女性が排泄している絵」「四肢を切断された女性が犬の格好をしている絵」などがスクリーンに映し出されたといい、会田氏は「デッサンに来たモデルをズリネタにした」などと下ネタを口走ることがあったという。女性は大学側に抗議したものの、その後も別のゲスト講師の講義で勃起した男性の写真の投影などがあったといい、急性ストレス障害の診断を受けていた。

ヌードの美術講義が「セクハラ」と大学を提訴 講師の会田誠氏が反論 - ライブドアニュース

会田氏の講義の後にオーさんは「すぐに、大学のハラスメント窓口に苦情を申し立てた*1*2とのことで、この時点で大学側がきちんと対応できなかったことが問題の始まりと思われます。

(女性は)学校側に抗議。学校側は事実を認める一方で、示談の条件として校舎の立ち入りや学校関係者との接触を禁じるなどの対応をし、「外部に出したら名誉毀損として法的措置を検討する」などと大原さん側に伝えたという。

会田誠さんらにゲスト講義で自慰写真など見せられ「セクハラ受けた」 美術モデルの女性が学校法人を提訴 | ハフポスト

オーさんは、
「講義内容が本当にひどいものだった」「セクハラを訴えたあとも、大学側の対応が、教育者としてあるまじき姿だった」「生徒を守ってくれないのは本当に残念だ」*3
「有名人を守るため、生徒側の口封じをした教育者としてあるまじき行為が許せなかった」*4
と語っています。

なお、三回目で嫌な思いをしたのに、なぜその後も講義を受け続けたのか疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、こうした公開講座というものは有料ですから、苦情を申し立てた上で受講を続けたことは特別おかしなことではないでしょう。問題は、五回目にも同じようなことが起こる可能性があったのに、十分な対応をしなかった大学側の姿勢ということになるはずです。
*5

さて、「講義内容が本当にひどいものだった」のかどうかを、会田氏の発言を見て確認してみましょう。

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過激なエログロ画家・会田誠氏はこのようにもっともな説明をしています

会田氏はオーさんの記者会見の報道を受けて、ツイッターで詳しく事情を説明しています。*6

(その日の講義は)学者や研究者のやる講義からはほど遠い、実作者としての言葉だった。

落ち着いた文化教養講座をイメージしていたなら、すごいギャップがあったでしょう。

そもそも西洋から来た「ヌード」という美術のジャンルが、歴史的に「妙なもの」であるという点を軸に話したつもりでした。研究者でないので結論なくグダグダ話しただけと思いますが。全体的には「人類にとって芸術とは何か」という僕の人生を賭けたシリアスな問いの一環だったはずです。

「モデルをズリネタに」云々という文字がありましたが、おそらくこういう文脈で出てきたものです。美大油絵科の学生としてみんなとヌードモデルを描いていた時に、はたと気づいた。裸の女性が真ん中にいて、たくさんの男たちが(当時美大は男子学生が多かった)それを凝視している。

そして言外に欲情は禁じられてる。これってなんなんだ? 何ゆえなんだ? 歴史的経緯は? 美術・芸術の領域(具体的には芸大上野キャンパス)から一歩出た世間は、まったく違う風か吹いているじゃないか? どっちが嘘をついているんだ? どっちが病的なんだ? そういう問いです。

だからこそ、このあたりの僕の主張は強めになってしまう。近代美術を愛している人々の心の平和を根底から揺すぶってしまう。今回の件と関係あるかどうかはわからないけれど。

会田氏の説明は、自作と講義内容が決してセクハラを意図したものではなく、「今日的な意味で十分に芸術的であること」を明快に説明しています。

また、オーさんが会田氏の講義によって精神的苦痛を受けたことについては、ご自分が訴えの対象になっていないこともあるのでしょう、まったく触れていません。

会田氏の画風は極めて特殊なものですから、これに接することで精神的苦痛を感じる方は当然いるだろうと思います。

とすれば、そうした点について事前に大学側が十分に配慮をしていたか、また、オーさんからの抗議があった時点できちんとそれに答えたかどうかが問題になってきます。

なお、オーさんは会田氏が「酒に酔ったような状態で現れた」*7と言っているのですが、これについては会田氏は次のようにはっきりと否定しています。

僕の(研究者でも学者でもないのでこれしかできない)フリートーク的スタイルと、肝臓の弱りからくる赤面(30年にわたる飲酒が原因で、僕の知り合いならみんな知ってること)ですが、この時はけして【まだ】飲んでません。彼女の単純な誤解です。

https://twitter.com/makotoaida/status/1100732706759962625

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古っぽくて営利主義的な大学運営こそが問題なんじゃない?

すでに書いたように、五回中三回目の会田氏の講義の後、オーさんは「すぐに、大学のハラスメント窓口に苦情を申し立てた*8*9にも関わらず、大学側はこれに十分な対応をすることができなかったと思われます。

その結果、五回目の写真家・鷹野隆大氏の講義で同様の「事件」が再発してしまったわけです。

大学側の問題対応は、この後の話し合いでピークに達します。

「大学側は同年7月、環境型セクハラについて、対策が不十分だったと認める内容の調査報告書をまとめた」*10にも関わらず、次のような示談条件をオーさんに伝えたというのです。

学校側は事実を認める一方で、示談の条件として校舎の立ち入りや学校関係者との接触を禁じるなどの対応をし、「外部に出したら名誉毀損として法的措置を検討する」などとオーさん(本記事筆者により仮名化)側に伝えたという。

会田誠さんらにゲスト講義で自慰写真など見せられ「セクハラ受けた」 美術モデルの女性が学校法人を提訴 | ハフポスト

オーさんが、

「セクハラを訴えたあとも、大学側の対応が、教育者としてあるまじき姿だった」「生徒を守ってくれないのは本当に残念だ」*11
「有名人を守るため、生徒側の口封じをした教育者としてあるまじき行為が許せなかった」*12

と訴えるのも当然ではないでしょうか。

ただし、ここでオーさんが「有名人を守るために」としている点は、たぶん違うでしょう。

世間一般からすれば、会田氏の作風は「猟奇的」であり、決して歓迎されるものではないでしょう。しかしながら氏が美術界で高い評価を受けていることは事実であり、今回の会田氏の説明を見ても分かる通り、彼の評価がこうした「事件」で揺らぐわけがありません。

氏の評判は、揺らぐわけもないのですから、大学がそれを守ろうとするわけもありません。

大学側は、まさかオーさんが訴えるとは思わなかったために、一人のクレーマーを「葬り去れば」問題は解決すると考えたのでしょう。

古っぽい大学の体質が問題をこじらせてしまったというわけです。

そもそも会田氏は、

西洋から来た「ヌード」という美術のジャンルが、歴史的に「妙なもの」である

と述べているわけで、これの意味するところは、

  • 「お上品ぶっているけれども、ヌードだってただのエロでしょ」

ということに他なりません。

そのような講師による講座を企画したのであれば、

  • 『人はなぜヌードを描くのか 見たいのか』というタイトルと、「ヌードを通して、芸術作品の見方を身につける」という副題をつけた

ことはまったく「詐欺的」で「タイトルに偽りあり」としか言いようがなく、今回の「事件」は

  • 講座の主催者が自ら招いた「自爆事故」

としか言いようがありません。

オーさんを「当たり屋」的に言うのはまったく筋違いというものです。

エロいオバンやオジンを客層として想定するのならば、

  • 「近代のヌードから現代のエログロへ - 猟奇性は芸術足りうるか」

とでもすればよかったのです。

第三回目の講義のタイトルは、

「会田誠が語る、己の性欲をアートに昇華しろ!!」

会田誠にケンカを売った例の女性は本当に”当たり屋”なのか? - おんなが泣くとき

としていたらよかったのに、という意見もあり、まったく同感です。

結局この事件は、大学が旧態依然の体質を抱えたまま、営業成績を気にしすぎたゆえに起きた

  • 「犬も食わないくだらない事件である」

というのがぼくの正直な感想です。

被害を受けた女性の方には心よりご同情いたしますが、どうかありもしない高尚なアカデミズムなどという幻想はこの際捨て去って、芸術のエログロ性に向き合った上でモデルを続けるか、あるいはきっぱりモデルはおやめになるか、どちらかの道をお選びになることをおすすめしたいと思います。老爺心ながら、はい。

「問題」を解決するため、会田氏が積極的な関与をすることを提案します。

最後に会田氏と大学側に、勝手な提案をしてこの稿をしめくくることにしましょう。

会田氏は今回なんらやましい点はないわけですし、もし大学側が初めから会田氏に相談をしていたら、そもそもこのような事態にはならなかった可能性もあります。

また、このような訴訟が起きたことで氏が不利益を被ることは、ほとんどないでしょう。けれども実際に裁判になって証人として呼ばれるとなれば、それはそれで大変なことでしょうから、積極的にこの件に関与したらよいと思うのです。

つまり、セクハラのような意図はなかったにしろ、現にオーさんが精神的苦痛を受けたことは事実ですから、その点はさっさと謝罪したらよいのではないでしょうか。

その上で大学側は、今後このような「事件」が再発しないようにきちんと対策することを確実に実行し、会田氏は、そうした対策が講じられた上でなければ、京都造形芸術大学・東京藝術学舎を運営する学校法人瓜生山学園が企画する講座は引き受けない、ことを明言するというのはどうでしょうか。

会田氏がオーさんと大学の間に入ることで、オーさんの気持ちにしっかりと配慮することができれば、オーさんとしてもすでに記者会見をすることで大学側の問題点を社会にアピールすることはできているわけですから、訴訟を取り下げて示談に至る道が当然ありうると思います。

そしてその示談の条件としては、その内容をきちんと公にすることが当然必要でしょう。

大学側としてもそこまで丁寧にすれば、途中での対応の誤りはあったにしても、最終的には誠意を示したことが認められますから、評判の悪化を避けられることになり、十分なメリットがあるはずです。

最後に一言。

  • 看板に偽りあれば、最後に損をするのは自分。

以上、固い話題で長くなりましたが、表現の自由の問題もからむゲージュツのお話でした。

それではみなさん、ナマステジーっ♬

今回参照した記事はこちらです。
会田誠にケンカを売った例の女性は本当に”当たり屋”なのか? - おんなが泣くとき
・[http:美術モデルが京都造形芸術大学を告発「クレーマー」と批判も - ライブドアニュース]
会田誠さんらにゲスト講義で自慰写真など見せられ「セクハラ受けた」 美術モデルの女性が学校法人を提訴 | ハフポスト
ヌードの美術講義が「セクハラ」と大学を提訴 講師の会田誠氏が反論 - ライブドアニュース
「会田誠さんらの講義で苦痛受けた」女性受講生が「セクハラ」で京都造形大を提訴 - 弁護士ドットコム

[追記 2019.3.6] 本記事を書いた意図の説明です。

としべえ2.0β on Twitter: "会田様、度重なるリプライで失礼いたします。
当方、以前書店で「孤独な惑星」https://t.co/yEQpM4Fatsのポスターを拝見して以来、会田様の作品にとても魅了されている者です。
下記の記事を書いた意図について説明いたしますので、ご一読いただければ幸いです。(続く)
https://t.co/MCdgvx1Kxz… https://t.co/qkpNp9zukb"
会田誠氏のツイートへのリプライ]として書いた文章をこちらに掲載します。


会田様、度重なるリプライで失礼いたします。
当方、以前書店で「孤独な惑星」https://amzn.to/2NKrcBxのポスターを拝見して以来、会田様の作品にとても魅了されている者です。
下記の記事を書いた意図について説明いたしますので、ご一読いただければ幸いです。
(ツイートではここに本記事のアドレスを記載)

記事では「エログロ作家」と書きましたがこれはあくまで表現のアヤであり、会田様が既成の芸術を裏返して表現する手法はとても素晴らしいものだと理解しております。(続く)

一方で、社会には様々な感受性を持つ受け取り手が存在し、会田様の一部の表現は「研ぎ澄まされた感受性を持つ少数の方にとっては脅威となる」ほどに存在感のあるものになっていると考えます。(続く)

このとき、「危険な作品」はきちんとゾーニングし、被害を受ける恐れのある少数者の目に触れないように十分な注意をし、少数者の安全をはかることは、作者にとっても、教育機関にとっても大切なことだと思います。(続く)

今回の件で適切な配慮がなされていたかどうかについては、シラバスの説明を見た限り、十分な配慮がなされていなかった可能性が考えられ、それを現時点で指摘することは、今後日本で会田様がなさっているような革新的な表現を若い世代が受け継いでいくためにも有意義なことだと思うのです。(続く)

十分な配慮をしていたにも関わらずこのような「事故」が起こったのだとしても、現実に「被害者」がいるとき、「責任」の問題は別にした上で「被害者感情」を考慮し、「ゾーニングの不十分性」について謝罪をすることは、これも前衛芸術の健全な受容のために有意義なことではないでしょうか。(続く)

以上、勝手な意見ではありますが、当該記事を書いた意図を説明させていただきました。お騒がせして申し訳ありません。

[追記#2 - 2019.3.6] 講座を企画した鈴木芳雄の発言です。

全五回の公開講座を企画した美術ジャーナリストの鈴木芳雄氏が次のような発言をしてらっしゃいます。

大学からこちらには何の連絡も報告も無い。

鈴木氏のツイートより#1

京都造芸大藝術学舎の会田誠さんの授業で「ショックを受けた」という女性は鷹野隆大さんの回に外部者同席を希望し大学は認めたが、実際に授業を行うこちらにはそれが弁護士なのかフェミニズム関連の人か、人数も顔も名も知らされなかった。なのでそこに今回の宮腰直子弁護士がいたかどうかは知らない。

鈴木氏のツイート#2

ブログの内容に対して言うと、「色々」というのは今回の提訴問題そのものではなく、それ以前の大学の「匿名相手にともかく謝罪文を書け」という理不尽、不誠実な要求への不満です。今回の提訴は大学宛であり、当時は原告の名も知らされなかったので事態も対象も異なります。

(ブログとは、
私も会田誠先生の講義を受講しましたが・・・? - アートにつぶやく
のこと。講義自体には問題なかったという趣旨の意見。鈴木氏の発言についての言及がある)

これを読むと、大学側の対応の問題が浮き彫りになると同時に、訴えを起こしたオーさん側の弁護士の行動にも不可解なものを感じます。

いずれにせよ、企画をされた鈴木氏、講師の会田氏、鷹野氏には大きな落ち度はないし、オーさんの行動も十分理解できるものだと思います。

やはり一番の問題は大学側の対応であり、オーさん側の弁護士さんの行動にも問題があるかもしれません。

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※ヘッダ画像をこちらの会田氏の作品に差し替えます。

『犬』を最初に描いた大学院1年の時に、電話ボックスにびっしり貼られた風俗店のピンクチラシを金箔に見立て桃山障壁画を模した『鶯谷図』(1989年)も描いている。
ポルノや性に限った話ではなく、僕には自分が感受した〈文化相対主義のめまいや痛み〉の感覚を可視化するタイプの仕事が頻繁にある

https://twitter.com/makotoaida/status/1102895668463460353

f:id:suganokei:20190311104848p:plain

※当初使っていたこちらの画像は、ネットで拾った会田氏の「犬(野分)」をトリミングして一番過激な部分は見えないようにしたものです。
(画像の色合いも変化させてあります)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/suganokei/20190304/20190304194539.jpg

裸の女の子が四つん這いになって首輪をされてるだけで、不愉快に思う方もいらっしゃることを考慮し、リンクを載せる形に変更します。

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